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大阪地方裁判所 昭和43年(行ウ)810号 判決

大阪市西区九条南三丁目二六-一五

原告

秋田久男

右訴訟代理人弁護士

梅田満

鈴木康隆

豊川正明

片山善夫

松井清志

臼田和雄

稲田堅太郎

右訴訟復代理人弁護士

高藤敏秋

佐藤欣哉

桐山剛

大阪市西区本田三番町一七-二

被告

西税務署長

山崎勲

大阪市東区大手前之町一

大阪国税局長

米山武政

東京都千代田区霞ケ関一丁目一番一号

右代表者法務大臣

福田一

被告ら三名訴訟代理人弁護士

松田英雄

右訴訟復代理人弁護士

浦井勲

被告ら三名指定代理人

清家順一

重野昭治

新田陽一郎

被告署長および被告局長指定代理人

今福三郎

山中忠男

河本省三

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の求めた裁判

(原告)

1  被告署長が、昭和四二年六月二四日付で原告に対してなした原告の昭和四一年分所得税の総所得金額を三、二五三、六九四円とする更正処分のうち五〇〇、〇〇〇円を超える部分を取消す。

2  被告局長が、昭和四三年八月一五日付で原告に対してなした前項更正処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決を取消す。

3  被告国は原告に対し、五〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年一〇月二二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  第3項につき仮執行宣言。

(被告ら)

1  主文同旨。

2  仮執行免脱宣言。

第二、当事者双方の主張

(請求原因)

一、原告は、鉄工業を営むものであるが、昭和四一年分所得税につき、被告署長に対し、白色申告により、総所得金額を五〇〇、〇〇〇円とする確定申告をしたところ、被告署長は、昭和四二年六月二四日付で総所得金額を三、二五三、六九四円とする更正処分をした。原告は、これを不服として被告署長に対し異議の申立をしたが棄却されたので、被告局長に対し昭和四二年一〇月四日審査請求をしたところ、被告局長は、昭和四三年八月一五日付でこれを棄却する旨の裁決をした。

二、しかし被告署長のした本件更正処分には次のような違法がある。

1 昭和四一年における原告の総所得金額は五〇〇、〇〇〇円であるから、本件更正処分は原告の所得を過大に認定しており違法である。

2 本件更正処分の通知書には理由の記載がなく、これは不服審査制度における争点主義に違反する。

3 本件更正処分は、原告の生活と営業を不当に妨害するような方法による調査に基づきなされたものであり違法である。

4 原告は西商工連合会および大阪商工団体連合会の会員であるところ、本件更正処分は、原告が右商工会の会員である故をもつて他の納税者と差別しかつ商工会の弱体化を企図してなされたものである。

三、被告国は、次の理由により、原告に対し損害賠償をすべき義務がある。

被告局長は、原告がした審査請求に対し、速やかに裁決をすべきであり、またそれができたのに故意にこれを遅延させ、一一ケ月間も放置して原告の簡易迅速に行政救済を受ける権利を違法に侵害した。これにより原告は、有形無形の損害を蒙つたが、これを慰籍する金額としては少くとも五〇、〇〇〇円を下らない。

右損害は、被告国の公権力の行使にあたる公務員である被告局長の違法な職務執行により生じたものであるから、被告国は、国家賠償法一条に基づき原告に対し右損害を賠償すべき義務がある。

四、よつて原告は、被告署長に対し本件更正処分の取消を、被告局長に対し本件裁決の取消を、被告国に対し損害金五〇、〇〇〇円およびこれに対する不法行為の日以後である昭和四三年一〇月二二日から支払済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告らの答弁)

一、請求原因一項の事実は認める。

二、同二項のうち、本件更正処分の通知書に理由の記載がないことは認めるがその余は争う。

三、同三項は争う。

(被告署長の主張)

原告の昭和四一年分の総所得金額は別表A欄記載のとおり四、二六五、一〇〇円であり、この範囲でなされた本件更正処分には違法はない。以下争いのある部分につき説明する。

1  仕入金額

昭和四一年当時、原告の仕事の大部分は得意先から材料の供給を受けて賃加工をするというものであり、原告自身が材料を仕入れて加工し販売したのは次の三件のみである。

(得意先) (収入金額)

池方精機 五、五四〇円

株式会社丸石製作所 二一六、九五九円

筒井裕一 四四、七七一円

通常、製品を、材料の仕入価額以下の価額で販売することはないので、仕入金額が、製品の販売によつて得た収入金額を上廻ることはない。右三件については正確な仕入金額が算出できないので収入金額をもつて仕入金額とする。

2  荷造運賃

原告は、外注先である株式会社ニチリおよび内川製作所こと内川喜美栄との間で材料、加工品を運搬するための運賃を支出した。原告の主張によれば昭和四一年当時原告は一ケ月二〇、〇〇〇円の運賃を支払つていたというのであるが、原告は同年中、七月、一〇月、一一月、一二月の四ケ月は外注先へ発注していないから同年中に運賃の支払をしたのは八ケ月分であり、その額は一六〇、〇〇〇円となる。

また昭和四一年中に、株式会社ニチリが原告へ加工品を納入した回数は三二回で、内川が原告へ加工品を納入した回数は九回でその合計は四一回となる。そして品物を原告方と外注先との間を往復させる場合、仮に外注先ごとに配車するとすれば配車回数は往復で八二回となり、その運賃を一回につき二、〇〇〇円とすれば合計一六四、〇〇〇円となる。しかし、材料を外注先へ運搬した場合、帰りにその外注先から加工品を積み込んで帰ることも多いから、実際の配車回数は八二回より少いこととなる。したがつて運賃も右一六四、〇〇〇円より少くなる。

3  水道光熱費

原告が昭和四一年中に負担した水道光熱費は、水道代が一八〇、〇〇〇円、電気代が電灯料一六、一四二円、電力料一四六、四〇八円の合計一六二、五五〇円、合名会社日新鉱産商会から買入れたコークス代が四〇一、三七五円であり、その総額は七四三、九二五円となる。

4  雇人費

昭和四一年中、原告方に雇用されていたのは、内田平一郎、内田フミ子および園田清純の三名であり、同年中に内田平一郎に対し二四〇、〇〇〇円、内田フミ子に対し一八〇、〇〇〇円、園田清純に対し三九六、〇〇〇円の給料が支払われた。

5  外注費

原告は、製品の加工の一部を、株式会社ニチリおよび内川喜美栄に発注しており、昭和四一年中に原告が負担した右外注費は、株式会社ニチリに対する三九六、四八〇円、内川に対する一三〇、〇〇〇円の合計五二六、四八〇円である。

(被告署長の主張に対する原告の答弁)

被告署長主張の金額に対する認否および原告の主張額は別表B欄記載のとおりであり、以下争う部分につき説明する。

1  仕入金額

被告主張の仕入金額は、掛仕入のみであり、これに現金仕入を加えると五〇〇、〇〇〇円を下らない。

2  荷造運賃

昭和四二年当時原告は、秋丸吉雄に対し、毎月二〇、〇〇〇円を下らない運送費を支払つていたので年間の荷造運賃は二四〇、〇〇〇円を下らない。

3  水道光熱費

原告が昭和四一年中に負担した水道光熱費は、水道代が一八〇、〇〇〇円、電気代が一ケ月平均一六、〇〇〇円であり、一年間で一九二、〇〇〇円、合名会社日新鉱産商会および十三燃料株式会社から買入れたコークス代が七〇八、〇〇〇円であり、その総額は、一、〇八〇、〇〇〇円となる。

4  雇人費

原告は、昭和四一年当時、常雇として、高崎勇、吉岡広、園田清純、内清吉を日給二、五〇〇円で雇用し、アルバイトとして、内田平一郎、勇元重雄を一ケ月に一〇日間日給二、〇〇〇円で、内田フミ子、勇元富枝を一ケ月に一〇日間日給一、五〇〇円で、秋田真一、内田稲男を一ケ月に一週間ないし一〇日間日給三、五〇〇円でそれぞれ雇傭していた。そして同人らに対し、一ケ月につき合計二七〇、〇〇〇円の給料を支払つていた。

5  外注費

原告が昭和四一年中に負担した外注費は、株式会社ニチリに対する一、〇九二、、六五一円、内川に対する九九二、五〇〇円の合計二、〇八五、一五一円である。

理由

一、請求原因一項の事実は当事者間に争いがない。

二、1 原告の昭和四一年分の所得額について

別表のうち、仕入金額、荷造運賃、水道光熱費、雇人費、外注費を除くその余の各費目については当事者間に争いがない。そこで争いのある費目について検討する。

(1)  仕入金額

証人村田好三の証言により真正に成立したものと認められる乙第五号証の一ないし三、証人村田好三、同秋田ミツエ(第一回)の各証言によれば、昭和四一年当時の原告の業務は、得意先から材料の供給を受け、それを加工し工賃の支払を受けるいわゆる賃加工が大部分をしめ、原告自身が材料を仕入れてこれを加工し、製品を販売していたのは、池方精機、株式会社丸石製作所および筒井裕一の三者に対してのみであつたこと、そして同年中における右三者からの収入金額は、池方精機からの五、五四〇円、株式会社丸石製作所からの二一六、九五九円、筒井裕一からの四四、七七一円の合計二六七、二七〇円であることが認められる。ところで右認定の事実のうち、いわゆる賃加工の場合については、材料は得意先から供給されるのであるから材料を仕入れることはなく、よつて必要経費として仕入金額を計上することはあり得ない。したがつて本件において仕入金額が必要となるのは、原告自身が材料を仕入れて加工した上製品を販売した前記認定の三者からの収入金額二六七、二七〇円についてのみであるが、通常材料を加工して製品を販売する場合、資金繰に窮する等特段の事情のない限り、材料の仕入価額以下の価額で製品を販売することはあり得ないので、仕入金額は製品の販売価額(収入金額)を超えることはなく、必要経費である仕入金額を収入金額と同額とみても所得金額が過大となることはない。そして右特段の事情が認められない本件においては、仕入金額が前記認定の収入金額二六七、二七〇円を超えることはないと考えられるので、仕入金額を右収入金額二六七、二七〇円と同額と認定することができる。

(2)  荷造運賃

証人秋田ミツエの証言(第一回)によれば、昭和四一年当時原告において負担していた荷造運賃は、原告方と外注先である株式会社ニチリおよび内川製作所こと内川喜美栄との間で材料および製品を運搬するための運賃のみであること、原告は、株式会社米沢製作所から受注したものを株式会社ニチリおよび内川喜美栄に対して発注していたことが認められる。官署作成部分については成立に争いがなくその余の部分については証人河口進の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる乙第二号証、同証言により(乙第三号証の二、三については原本の存在と共に)真正に成立したものと認められる乙第三号証の一ないし三によれば、昭和四一年中における原告の株式会社ニチリへの発注および同会社からの納品は、一月から六月までと八月、九月の八ケ月に限られ、他の月には発注および納品がなかつたことが認められる。一方内川に対する発注および同人からの納品の状況は明らかではない。しかし前掲乙第五号証の一によれば、昭和四一年中における原告の株式会社米沢製作所に対する売上は、一月から九月まで毎月あり、一〇月以降はないことが認められる。以上の事実を総合すれば、昭和四一年中に、原告が、一月から九月までの間、毎月株式会社ニチリ(但し七月を除く)あるいは内川に対し、製品の加工を発注しあるいは右両者から納品を受けていたこと、したがつて右九ケ月間について毎月運賃を負担していたことが推認される。そして証人秋田ミツエの証言(第一回)によれば、原告が負担していた荷造運賃は一ケ月につき二〇、〇〇〇円であつたことが認められるので、その合計額は一八〇、〇〇〇円となる。原告は、荷造運賃として合計二四〇、〇〇〇円を要した旨主張するところ、右主張にそう証人秋田ミツエの証言部分(第一回)はたやすく採用できず、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。

(3)  水道光熱費

原告が、昭和四一年中に負担した水道代が一八〇、〇〇〇円であることは当事者間に争いがない。成立に争いのない乙第七号証、証人秋田ミツエの証言(第一回)によれば、原告が、昭和四一年中に負担した電気代は、電灯料一六、一四二円、電力料一四六、四〇八円の合計一六二、五五〇円であることが認められ、右金額を超える電気代を要した旨の原告の主張にそう証人秋田ミツエの証言部分は前掲乙第七号証に照らしたやすく採用できず他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。次に、成立に争いのない乙第八号証、証人秋田ミツエの証言(第一回)によれば、原告は、昭和四一年中に、合名会社日新鉱産商会に対し、四〇一、三七五円のコークス代を負担したことが認められる。原告は、右の外十三燃料株式会社からもコークスを買入れておりそれを加えるとコークス代は七〇八、〇〇〇円となる旨主張するところ、右主張にそう証人秋田ミツエの証言(第一、二回)および甲第三号証の一の記載内容は、証人山中忠男の証言およびそれにより真正に成立したものと認められる乙第一〇号証に照らしたやすく採用できず、他に前記認定の四〇一、三七五円を超えるコークス代を要したとの事実を認めるに足る証拠はない。よつて水道光熱費の額は、七四三、九二五円となる。

(4)  雇人費

原告が昭和四一年中に、内田平一郎に対し二四〇、〇〇〇円、内田フミ子に対し一八〇、〇〇〇円の給料を支払つたことは当事者間に争いがない(原告は、内田平一郎、内田フミ子の両名はいずれもアルバイトとして一ケ月に一〇日原告方に勤務し、平一郎に対しては一日につき二、〇〇〇円、フミ子に対しては一日につき一、五〇〇円の日給を支払つていた旨主張するところ、右主張によれば、一年間に支給した給料は、平一郎に対し二四〇、〇〇〇円、フミ子に対し一八〇、〇〇〇円となることは計算上明らかである)。証人河田稔、同秋田ミツエ(第一回)の各証言によれば、昭和四一年当時、園田清純が、いわゆる常傭いとして原告方で勤務していたことが認められ右認定を覆すに足る証拠はなく、したがつて園田は一ケ月平均二五日は勤務していたものと推認され、証人秋田ミツエの証言(第一、二回)、前記争いのない内田平一郎、内田フミ子に対する給料の支給額、証人秋田ミツエの証言(第一、二回)により認められる内田平一郎、内田フミ子が原告方でアルバイトとして一ケ月に一〇日位勤務し、平一郎に二、〇〇〇円、フミ子に一、五〇〇円の日給を支払つていたとの事実を総合すれば、原告は園田に対し、一日につき二、五〇〇円の給料を支給していたものと認められる。したがつて園田に対する一年間の給料の支給額は七五〇、〇〇〇円となる。右認定に反する乙第九号証の、園田に対する給料の額が一ケ月三三、〇〇〇円、一年間で三九六、〇〇〇円である旨の記載内容は、前記認定のとおり園田がいわゆる常傭いであつたことに照らせば、前記のとおりアルバイトであつた平一郎、フミ子の給料の額に比べ著しく低額にすぎたやすく採用できず他に右認定を覆すに足る証拠はない。

原告は、右三名以外に、高崎勇、吉岡広、内清吉、勇元重雄、勇元富枝、秋田真一、内田稲男らが常傭またはアルバイトとして勤務していた旨主張する。そして右主張にそう甲第三号証の二ないし四、八ないし一一(以上はいずれも私人作成の証明書)が存在するが、これらはいずれも内容、作成名義人共に同一人の筆跡によるものであり(この点につき証人秋田ミツエ(第二回)は、原告の娘が代筆した旨供述するけれども各作成名義人が署名しなかつた理由が判然としない)、氏名に間違いがあつたり(甲第三号証の二)、また内田稲男作成名義の文書(甲第三号証の八)には、内田平一郎作成名義の文書(甲第三号証の六)に押印された印と同一の印が押印された後別の「内田」の印が押印されている(この点につき証人秋田ミツエ(第二回)は、内田平一郎の印を押し間違えた旨供述している)等の事実が存在し、これら文書の成立についての証人秋田ミツエの証言(第二回)もあいまいであり、結局これらの文書が真正に成立したものと認めるに足る十分な証拠がないから、右文書は採用し得ない。また右原告の主張にそう証人秋田ミツエの証言部分(第一、二回)は、担当していたとする仕事の内容に齟齬があつたり、証言自体あいまいであり、また西税務署の職員であつた河田稔が昭和四二年五月頃、調査のため原告方を訪れた際、原告の妻である秋田ミツエが河田に対し、昭和四一年当時の従業員は前記平一郎、フミ子、園田の三名である旨、述べたこと(以上の事実は証人河田稔の証言およびそれにより真正に成立したものと認められる乙第九号証により認められる)、証人山中忠男の証言により真正に成立したものと認められる乙第一一号証の一、二に照らしたやすく採用できず、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。よつて原告の前記主張は採用し得ない。

以上によれば、雇人費の額は一、一七〇、〇〇〇円となる。

(5)  外注費

いずれも官署作成部分については成立に争いがなくその余の部分については証人河口進の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる乙第一号証、前掲乙第二号証、第三号証の一ないし三、証人秋田ミツエの証言(第一回)によれば、原告が加工業務の一部を株式会社ニチリおよび内川に依頼していたこと、そして昭和四一年中に、株式会社ニチリに対し三九六、四八〇円、内川に対し一三〇、〇〇〇円合計五二六、四八〇円の加工賃を負担したことが認められる。原告は、株式会社ニチリに対し一、〇九二、六五一円、内川に対し九九二、五〇〇円の加工賃を要した旨主張するところ、右認定の金額を超える加工賃を要したとの証人秋田ミツエの証言部分は、その証言自体から金額が定かでなく、かつ前掲乙第一、二号証、第三号証の一ないし三に照らしたやすく採用できず、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。よつて外注費の額は五二六、四八〇円となる。

以上によれば、原告の昭和四一年分の総所得金額は、別表C欄記載のとおり三、八九一、一〇〇円となる。そして本件更正処分の総所得金額三、二五三、六九四円は、右認定の金額の範囲内であるから、本件更正処分には所得過大認定の違法はない。

2 手続的違法の主張について

原告は、本件更正処分の通知書に理由の記載を欠く違法がある旨主張する。しかし原告が白色申告者であることは当事者間に争いがなく、白色申告者に対しては更正の理由附記は法律上要求されていないから右主張事実は何ら違法事由とはならない。

また調査方法の違法、差別取扱および他事考慮の主張についてはこれを認めるに足りる証拠はない。

よつて手続的違法の主張はいずれも採用できない。

三、原告の、被告局長がした本件裁決の取消を求める請求については、本件裁決固有の違法事由につき何らの主張、立証もない。

四、原告が、昭和四二年一〇月四日被告局長に対し審査請求をなし、これに対し被告局長が昭和四三年八月一五日付で本件裁決をしたことは当事者間に争いがない。右事実によれば、審査請求から裁決までの期間は約一〇ヶ月余りであるところ、被告局長が同種事案を大量に処理しなければならない事情にあつたことを考慮すれば、この程度の期間を要したことをもつて、直ちに原告の速やかに行政救済を受ける権利が侵害されたとはいい難い。

五、以上により原告の本訴各請求はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 寺崎次郎 裁判長裁判官奥村正策、裁判官山崎恒は転任につき署名捺印することができない。裁判官 寺崎次郎)

所得計算表

〈省略〉

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